帰る場所
- satohsou
- 4月18日
- 読了時間: 2分
更新日:4月20日

静かすぎる日々に
ため息が ひとつ落ちた
風が庭を通っても
草はただ 眠ったまま
鮮やかな景色を
遠く遠くへ 探しに出た日々
にぎやかで 価値あるものを
追いかけていた あの頃
けれど今
火のあたたかさと
茶の香りに包まれる夕暮れ
長く伸びる影のそばで
読みかけの本に ほこりが積もる
もう 問いかけは必要ない
何が正しいのか
何が楽しいのか
このひと部屋に射す 光と影
静かな暮らし
それこそが
いのちの ふるさと
歸處 かえるばしょ
曾嗟日靜無聲響 かつて なげきぬ ひのしずかにして おと なきを
空庭風過草猶眠 むなしき にわに かぜ すぐれども くさ なお ねむる
少年心急尋千景 しょうねんの こころ いそぎて ちのけいを たずぬ
老後方知此處真 ろうごに いたりて まさに しる このところ こそ まことなり
火煖茶香浮薄暮 ひは あたたかく ちゃのか はくぼに うかび
影長書冷倚門塵 かげは ながく ふみは ひややかに もんの ちりに もたれり
不問塵世何為樂 じんせの なにをか なして たのしみとせんと とわず
一室光陰即故鄉 いっしつの こういん すなわち こきょうなり
帰る場所
静かすぎる日々に、かつてはため息をついた
風が通りすぎても、庭の草は眠っていたまま
若き日は、にぎやかな千の景色を求めたけれど
今ようやくわかった、この場所こそが真実だったと
夕暮れに、火と茶の香りが静かに浮かぶ
長く伸びる影のそばで、読みかけの本にほこりが積もる
もう、「何が楽しいのか」を問わない
このひと部屋の光陰こそが、わたしのふるさとだった