いのちの庭
- satohsou
- 4月18日
- 読了時間: 1分
更新日:4月20日

ローズマリーの背中に
母の声がそっと宿る
タイムがひと枝 揺れるたび
父の手が風をなぞる
ラベンダーの香りは
静けさの中にふくらむ祈り
ネギも、紫蘇も、唐辛子も
この地に根を張り
小さな命を毎朝差し出す
うまくいかない、と思った日々も
ミントのようにいつの間にか広がり
セージのように
知恵となって息づいていた
ディルとバジルの影で
わたしたちは笑い合い
レモンバームの光の中で
くつろぐ「いま」に抱かれる
庭は問いかけてくる
この成長をどこまで受け容れるのか、と
けれどわたしたちは知っている
育ちすぎたら、分け合えばいいことを
枯れたら、また植えればいいことを
セロリも、コリアンダーも、芍薬も
すべてがこの小さな宇宙で
ひとつの調和を奏でている
この庭はいのちそのもの
わたしたちはただ
眺め、触れ、育て、愛す
今ここにいるということの
なんと深く、なんと豊かなことか